発行責任者は都内で活動する精神科医師で、長年、精神疾患を持つ当事者の退院の促進や社会参加に向けての活動をしてきました。
医師は多くの場合、診察室で患者さんが来るのを待ち、そして限られた診察時間、診察空間のなかで、薬物療法の工夫をしています。もちろん、こうした活動(診察)によって、うつ病の意欲低下や抑うつ気分が治ったり、統合失調症の幻聴や妄想が少なくなったりすることは確かであり、白衣を着た活動の大切さは尊重されるべきと思われます。
しかしながら、当事者は地域のなかで生活をしているのであり、そこで自分の身の回りのことをどれくらい上手にできているか、家族や友人と楽しく関われているか、趣味に没頭する喜びを持てているか、仕事をして自分の生活を自立的に行えているかなど、こうした人間的な側面に私たちは注目をして、支援をすることも重要です。
このような当事者の活動(アクティビティ)がもし精神疾患によって損なわれている場合、現在の医療では残念ながら薬物療法では十分な改善を期待はできません。むしろ、地域のなかで当事者を支え、時間と場所を共有しながら、日々の困りごとや将来への希望を明確にして、困りごとを解決し、希望を達成するための支援が必要となります。
発行者は過去20年来、地域に出向いて、当事者の家庭や、入所施設、通所施設などにおいて、当事者や家族、支援者と語り合い、当事者の自己決定の意思を可能な限り尊重し、その力を引き出すための取り組み(精神科のリハビリテーション)を行ってきました。また、発行者は過去に複数の看護学校や、大学の社会福祉学科等にて教鞭もとり、未来の治療者や支援者を育てる活動もしてきました。
今回のマガジンではこうした活動の実際を紹介します。また、精神疾患についての医学的な知識や、当事者と関わる際の支援技術等についても、たんに経験則や発行者独自の価値観に拠るのではなく、科学的な根拠に基づいたものを、欧米を中心に広く採用されている支援の形などを参照しながら、紹介をしたいと思っています。